柏から考える

実家から戻りました。

地元・柏の僕が育ったニュータウンの現在(ゼロ年代)について少し書く。

まず、木がでかい。街路樹がすごい、圧巻。大通りはまさに緑のトンネルで、ここはまるで(「風の谷のナウシカ」の)腐海に呑み込まれたみたいである。

「避暑地みたいでしょう」と母が僕に言った。確かにここは「ファスト風土」とはまるで無縁のような場所で、つくづく月日(時間)とはすごいものだと思った。それは樹齢(幹の太さ)によって、自然が正しくカウントする。ここは「ファスト風土」よりも避暑地の「軽井沢」とよく似ている。それは「郊外」の新しい景色。

実家の庭の一角の昔からある家庭菜園は相変わらず生い茂っている。今はキュウリが生っている。他にも、実がないと名前がわからない植物がたくさんあって、とにかく賑わっている。懐かしい空気と匂い。

そんな庭を眺めたあと、母に「スイカはないの?」と尋ねたら叱られた。そりゃあ、失礼な言い方だ。実家なので、つい甘えが出てしまった。でも、母が言うには、僕が子供の時にも、それと全く同じセリフを母に言ったらしい(まじで?)。その時の僕は、そのあと自分でスイカの苗を買ってきて、家庭菜園の一角に植えて、そして見事に失敗した・・ああ、思い出した、そうそう、スイカは受粉が難しい。そんな記憶、僕はずっと忘れてた。

(*´ー`)

「少し見てくる、自転車借りる」と言って僕は出かけた。木がすごすぎる*1。木の根っこのせいで、歩道の舗装が一部盛り上がってる。これは計画(植栽計画)ミスではないかとか、専門的思考を巡らせつつ*2ニュータウンの中心の商業地区へ行くと、スーパーマーケットは無くなっていて、その場所は戸建住宅6件になっていた。潰れた理由は、住人の多くがニュータウン外の競合店へ車で買物へ行ってしまったからなのだけど、この商業地区にはスーパーの代わり(?)にコンビニができていた。僕が生まれて初めてエロ本を買った本屋はまだあった(これは別にどうでもいい)。

商業地区の少しはずれには小さな集会場ができていた。母の話によると、ここはよく「お葬式」で使われているらしい*3。バス停の近くの空地だったところにはプレハブ2階建の若夫婦用の賃貸マンションができていた。これは「郊外」特有の「テーマパーク」的な元のニュータウンの景色とは異なる、もう一つの真正な「郊外」が、このニュータウン内に侵食し始めていることを意味しているのかも知れない。*4

それから、道路を挟んで向かい側の、ここも空地だったところ(ここは月極駐車場だったかも)に、三角屋根のある平屋の建築物ができていた。何だろうと思ってママチャリ漕いで行ってみると、そこはなんと「幼稚園」だった。

ああ、確かにニュータウンは問題が山積するところだけど、その一方で、世界は確実に「循環」している。僕は何か「勇気」をもらったような、そんな気がした。*5

続く。次回は「悪夢の飲み会」編!?


(記事追加、8月19日)Googleの「ストリートビュー」の写真でも貼ろうと思ったら、まだなかった。代わりに「航空写真」貼ります。それぞれの位置関係は大体こんなところです。あと、上の本文に少し誤りがあったので訂正してあります(戸建住宅6件→7件、集会場→自治会館、幼稚園→保育園)。まあ、田舎ですね、ここ。

*1:アメリカの住宅参照。アメリカでも時を経たニュータウンは森のように木々が生い茂る。横浜の「マイカ本牧本牧地区の再開発」では、小さな若木を嫌って、竣工時にすでに大木を植えていた(移植した)けど、そういう環境のほうが僕は人工的だと思う。

*2:じつは、このニュータウンは建築家・宮脇檀が設計した、ということを僕はニュータウンの仕事をするようになってから知った。このニュータウンは、かなりエポック・メーキングだったようで、この業界で仕事をしていると、ほとんどの人がここをよく知っていて、みな一度は訪れている。また、このニュータウンは「東京から考える」(NHKブックス)で描かれているような東京西部のニュータウンよりも新しい(時代が後)なので、計画の精度(または住宅地の「テーマパーク」度)が高いとも言える。

*3:ニュータウン内の「高齢化」は社会問題となっている。郊外の景色-3参照。

*4:このニュータウンは景観のデザインコードが厳しいところなので、それなりにデザインされた、アースカラーを基調とした賃貸マンションとなっていて、周りの景色とは馴染んでいた。グローバリゼーション(town)定点観測など参照。

*5:一応、ここまでは少しフィクション仕立てふうに書いている。時間を少し早回しにしている。前に帰省した時に、すでにスーパーマーケットは閉店していたので、念のため。